こんにちは。
埼玉県越谷市の流カイロプラクティック院のフットマスター・流岳史です。
足の専門家「フットマスター」を仕事としていると、「足をキレイに見せるためにハイヒールを履く」という女性の声を聞く機会が多いのですが、ハイヒールを履いて安心していませんか?
ヒール高のある靴を履くと、私たちの身体は2足歩行をするように進化し構造を無視した状態になります。それなので履きこなす知識を持っていないと、かえって美しくない姿勢になってしまったり、将来、外反母趾・偏平足などの足の変形を起こし、肩こり・腰痛・ひざ痛などの痛みの原因となってしまいます。
そうならないために「姿勢をキレイに保つように意識する」とはよく聞きますが、ハイヒールを履くとどのように姿勢が変化して、何を意識する必要があるのか具体的にイメージができていない人が多いようです。
今回は誰でもできる「ハイヒールで美しい姿勢を保つ3つのポイント」をお伝えします。
実はフットマスターは男性でも、勉強会でハイヒールを履いて走ったり歩いたりする体験をしているんですよ。
理解しておきたい骨格に起こる変化
ハイヒールでも美しい姿勢を保つには、フラットなソールの時と比べて骨格にどのような変化が出てくるかを理解しておくと分かりやすくなります。
動物には足の着き方での分類があり、私たち人間はかかとを使う「蹠行性(しょこうせい)」に分類されます。蹠行性には他にサルやクマなど基本的に4足で生活しているけど、時折2足歩行をする動物が分けられます。
これに対し、かかとを着かない動物はつま先だけ接地する「趾行性(しこうせい)」と爪だけ接地する「蹄行性(ていこうせい)」に分けられます。趾行性にはイヌやネコが分類され、蹄形性はウマやシカなどが分けられます。
蹠行性と趾行性・蹄形性の大きな違いは歩くにかかとを着くか着かないかです。人間のように2足で安定した姿勢を保つように進化すればするほど、かかとの骨が大きくなり接地面積が大きくなります。逆に移動速度が速くなるように進化するほど、素早く重心移動ができて力を伝えやすいつま先に接地部分が集中して、かかとを着かない構造になるという特徴になります。
ここで大事なのは人間は完全2足歩行での生活を安定させるため、かかとの発達した踵の骨に体重を乗せる構造をしているということです。
これを踏まえてハイヒールを履いた時の画像を見比べると、ハイヒールを履いた時の足の骨格の状態は趾行性や蹄形性に近い形になり、かかとではなくつま先に重心が移動しやすい状態になっていることが分かります。
少し難しくなってしまいましたが、要するにヒトはかかとを使って歩く骨格構造をしているのに対して、ハイヒールを履いてヒール高が高くなるほどつま先歩きを強いられる状態になることを認識しておくことが大切です。裏を返せば、ハイヒールでキレイな姿勢を保つためには、つま先へ移動しやすい重心を意識してかかとに乗せ続けることがコツになります。
それでは「かかとに重心を乗せる」とは具体的にはどのようなことなのでしょうか?姿勢の変化を見ながら考えていきたいと思います。
かかとが発達したヒトの足
趾行性動物の骨格
ハイヒールを履いた時のヒトの足
よくあるハイヒールを履いて崩れた姿勢
実際によくあるハイヒールを履いて崩れた姿勢を見てみましょう。
1枚目の写真はかかとに重心が乗り切れず前のめりになる上体を、膝を曲げることで後ろに戻し、更に腰を落として重心を後ろに保っています。この姿勢だと骨盤が後傾するので腰椎前弯が伸びてしまい猫背になり、歩いても膝が伸びないでドタドタした歩き方になります。
このような姿勢ではひざ・腰の負担が大きく慢性肩こり・ストレートネックなどのリスクも高まります。
2枚目の写真はかろうじてかかとに重心を乗せているものの、やはり骨盤を後傾させて重心を斜め後ろに落とすことで上体を後方に引っ張りバランスを取っている姿勢です。この姿勢では、股関節の負担が大きくなり、四角いお尻や太ももの外側が張ってくる原因になります。
ハイヒールを履いて姿勢が崩れたよくある2例を見て頂きましたが、このようにハイヒールを履いてつま先に重心が移動しても、私たち人間は2足で生活しなければいけないので、ひざや股関節・腰などの各関節で、無意識に筋肉を頑張らせて姿勢を調整して安定を辛うじて保ちます。つまり、立ててはいますが、それはあくまで2本の足で立つことを保っているだけで、身体の各所の負担や見た目の美しさを無視した状態であるということです。ヒトはつま先立ちで生活できるような骨格構造をしていません。そのため要所を意識しておかないと体の各所に負担をかけながら、悪い姿勢でキープして定着してしまうことを理解しておきましょう。
ひざを曲げて調節
重心を後ろに保つために骨盤後傾が強くなった姿勢
「キレイな姿勢」は縦のラインが美しい
それでは、気を付けるべき「要所」とは何なのでしょうか?その前にちょっと「キレイな姿勢」について考えていきます。
始めに「正しい姿勢」とはどのような状態かを考えてみましょう。4足動物と違ってヒトは唯一アンバランスな2足での生活できる動物です。2足歩行を完成させる過程で、ヒトはかかとが発達しただけでなく、骨格構造を効率良く縦に並べることで、体重をうまく支えられるようになりました。骨格構造の縦のラインがキレイなほど体重が骨に分散し、筋肉が頑張らなくていいので疲れにくく自然体でいられます。先ほどの2例では縦のラインがいたるところで「く」の字に折れ曲がっているので美しくなく、またその分、筋肉が頑張って体重を支えなくてはならないので、慢性のコリや痛みの原因となってしまいます。
従って、目指すべき「キレイな姿勢」とは、縦のラインが美しく筋肉が無駄に力んでいない状態となります。
意識するのはかかと・ひざ・おなか
それではハイヒールを履いた時に、いったい何を意識すれば良い姿勢を保てるのでしょうか?次は具体的な3つのポイントを見ていきます。
まずは「かかと」です。
これまで何度か言及してきたように、蹠行性の動物はなぜかかとを地面に着けて歩くのかと言うと、それによって安定して2足で立つことができるからです。2足で立った時にかかとに体重がかかると、足の骨の真下に重心があるので、体重を骨で効率良く支えることができます。だから他の動物が4足でなければ体重を支えられないのに、ヒトは2足で体重を支えられるのです。
従って大事なのはハイヒールを履いても、きちんとかかと重心を意識することです。具体的にいうと、内くるぶしと外くるぶしを結んだ中央に「バランスポイント」が存在します。このかかとの骨の少し手前のくぼんだところに重心が乗ると、効率良く骨に体重が分散してキレイな姿勢が保ちやすくなります。
ハイヒールを履くと重心がつま先側にズレやすくなるので、意識しないとバランスポイントに乗り続けることができません。したがって、気が付いたらバランスポイントに重心を合わせることが1つ目のポイントとなります。
次に「ひざ」です。
先程の1枚目の写真の姿勢ではひざを曲げてバランスを取っています。ハイヒールの傾斜によって重心がバランスポイントから前に移動したことで身体は前に傾きます。これを平行に戻して倒れるのを防ぐために、無意識でひざを曲げてバランスを取ってこのような姿勢になっています。無意識に行う調整なので、敢えてひざを伸ばす意識はとても大切です。
またひざを伸ばす意識をすると、自動的にかかとのバランスポイントにも乗りやすくなります。つま先重心でひざを伸ばすと前のめりに倒れてしまうからです。このようにかかととひざのポイントは相乗効果があるので、ハイヒールを履いて立つ時には強く意識しましょう。
そして最後に意識するのが「おなか」です。
前述のようにかかと・ひざの意識でかなり下半身のポジションは安定してきます。しかしここで油断すると股関節や骨盤の前後の動きで上半身が調整されてしまい、文字通り腰で「く」の字に曲がって美しい縦のラインが描けません。
そこで意識をしたいのがおへそを引っ込めるように腹筋に力を入れることです。おへそを引っ込めるように腹筋を使うと、骨盤を中立の位置に保つインナーマッスルが働きます。この意識だけで、骨盤の前後の傾きや反り腰などのリスクが低くなります。
また骨盤の位置が安定すると、骨盤を土台に上へ延びる背骨のS字カーブもキレイに整列しやすくなります。このようにしてかかと・ひざの意識で下半身がまっすぐに並び、おなかの意識で骨盤を安定させて背骨もキレイに並ぶことで、骨格の縦のラインが整い体重がうまく骨に分散されて、キレイで疲れにくい姿勢になります。
以上をまとめると、ハイヒールを履いてキレイな姿勢を保つためには、以下の3つの意識が大切です。
- かかと(バランスポイント)に重心を乗せる
- ひざを伸ばす
- おなかを引っ込めるように腹筋を使う
実はこんな簡単なことでハイヒールを履いてもキレイな姿勢を保つことができます。「すぐ忘れちゃって姿勢が崩れちゃう」と仰る方もいますが、常に意識することは不可能なので、諦めずに気が付いたら実践することが大切です。日々の少しずつの積み重ねで、ハイヒールを履いてキレイな姿勢を保つための筋肉バランスが整ってきます。そうすれば、多少、忘れてしまっても大きく姿勢は崩れません。
一番良くないのは、我流で立ちやすいように体を使い、筋肉バランスを崩して背骨や関節に余計な負担をかけることです。悪い姿勢でい続けることで、コリや痛みのリスクが上がるだけでなく、悪い姿勢が定着して正しい姿勢に戻しにくい身体になってしまいます。
毎日できることから実践し続けると、将来に意識していない人との姿勢のクセや体の調子に絶対に差がでてきます。将来の健康美のためにも根気よく続けてみて下さい。
3つのポイントを抑えて縦のラインを意識した姿勢
バランスポイントに重心を置くとキレイな姿勢を保ちやすくなる
【番外編】ハイヒールでキレイな姿勢を保つために最も大事な「土踏まず」
さてここまでハイヒールでキレイに立つための3つのポイントをお伝えしてきましたが、実はもう一つ大事なポイントがあります。しかし、このポイントは意識だけではカバーできず道具を使う必要があります。
注目するところは「土踏まず」なのですが、詳しくご説明する前にもう一度、ヒトの骨格の進化の流れを確認します。
実は「蹠行性」の動物でも土踏まずはヒト特有のものです。他の霊長類でさえも土踏まずはありません。ヒトは唯一2足歩行で生活する動物です。そのことからも2足歩行を保つためにいかに土踏まずが大切か想像することができます。
土踏まずには歩く時に体重のかかる衝撃をスプリングのように動いて吸収して、各関節の負担を和らげる機能があります。しかしハイヒールを履いてつま先立ちの姿勢になると、ヒール高が高くなるほど土踏まずを潰すようにかかる圧が増大し、スプリング機能が働きにくくなります。更にこれを繰り返していると、土踏まずの形を保っていた靭帯が伸びきってしまい、土踏まずのアーチが崩れて外反母趾・内反小趾・偏平足などになります。こうなると靭帯は一度伸びきってしまうともとには戻らないので、スプリング機能を回復することはできません。それなので早いうちから土踏まずを守る対策が必要です。
またハイヒールを履いたキレイな姿勢を保つのにも、足裏アーチが潰れると重心がつま先側に移動しやすくなるので、土踏まずを良い状態に保つことはとても大切なことになります。
しかし厄介なことに、土踏まずのアーチだけは立って体重がかかれば潰れてしまうものなので、意識してアーチを保てるものではありません。
そこで私たちフットマスターでは、ヒール用のオーダーメイド矯正インソールを作製しています。お一人お一人の足の形を骨格の正しい状態でキープしながら石膏採型するので、出来上がったインソールは靴に入れるだけでバランスポイントに重心を矯正してくれます。
ただでさえもハイヒールは土踏まずを潰す圧が高く、足裏に疲労が溜まりやすいので、ご使用いただいている方の多くは第一声に「重心がバランスポイントに乗せやすい」「ひざが伸ばしやすくなった」「おなかに力を入れて上半身が安定する感覚が分かった」などと口にされます。
サンプル試着もできますので、ぜひ足元からしっかりと骨格の美しいラインを作りたい方は、全国のフットマスターにご相談下さい。
ヒール用オーダーメイド矯正インソール
まとめ~かかと・ひざ・おなか、そして土踏まず~
いかがでしたでしょうか?
今回はハイヒールを履いてキレイに姿勢を保つ3つのコツをご紹介しました。
① かかと重心
② ひざを伸ばす
③ おなかを引っ込める
どれも簡単なポイントですが、日々意識して実践することでキレイな姿勢を保てるだけでなく、将来のさまざまな不調のリスクを減らすことができます。
ぜひ諦めずに思い出すたびに一つ一つ取り組んでみて下さい。
また体の土台となる土踏まずは姿勢全体に影響します。キレイな姿勢を保つためには土踏まずをキレイな形に保つことが一番大切といっても過言ではありません。そのためにオーダーメイド矯正インソールは、足元からあなたの姿勢を支える有用な道具になります。ぜひ体の土台からキレイな姿勢を作りたい方は、全国のフットマスターにご相談下さい。
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