ふと履きなれた靴を見てみて、「あれ?片方に偏った歩き方をしているように靴の形が崩れているな」と感じたことはありませんか?例えば画像の靴のように・・・
こちらの靴は左足は外側に、右側の靴が内側に傾いています。実はこの靴の方は右足の土踏まずが弱ってきて、左足に重心がかかる歩き方になってしまっているのです。そのため、骨盤の動きも左右で違いが生じ、背骨の歪みにつながり、肩こりや頭痛の原因になってしまっているのです。
このように土踏まずは体の土台となる部分なので、その歪みは思いもよらない上半身の部分にまで連鎖します。逆に言えば、土踏まずの歪みを抑えれば、全身が歪むリスクをかなり抑えられるということです。
今回は、全身の歪みを防ぐうえで大事な土踏まずで起こる歪みの原因と、その予防法をまとめてみました。
土踏まずのはたらき
土踏まずは、足の裏の地面から離れている部分です。私たちが歩いたり飛んだりすると、着地の際に土踏まずと地面の空間がクッションの役割をするので、衝撃が吸収されてひざ関節や股関節への負担が和らぎます。
着地時に足の裏には体の重みだけでなく、足が降りてきた落差の分の衝撃が加わります。この衝撃に土踏まずが潰れずにアーチを保ち続けられるのは、筋肉と靭帯のはたらきによります。これにより、土踏まずが足の着地の衝撃を一回たわんで吸収し、元の形状に戻ることで反発力が起こり、次の一歩を踏み出す推進力が起こるのです。
土踏まずのゆがみ
それでは何が起こると、最初の画像の人の右足のように土踏まずが弱ってしまうのでしょうか?
それは、土踏まずの形状を保持している筋肉と靭帯の衰えによります。これらが弱ってしまうと、着地の衝撃に対して土踏まずが潰れたまま元に戻れなくなります。そのため、着地のショックは吸収できなくなり、ひざ関節や股関節、または首まで衝撃が伝わるようになってしまいます。歩いているときの一歩一歩の衝撃はそれほどではありませんが、この積み重ねが各関節の痛みやさまざまな体の不調の原因となるのです。
土踏まずのアーチが弱ると出てくる変化
土踏まずのアーチが崩れてくると、足の形が変形してきます。足幅が広がる開帳足、土踏まずが無くなる偏平足、親指の根本が出っ張り、先は人差し指のほうを向いてしまう外反母趾が代表的なものです。
このように足の形が変形してしまうと歩き方にも癖が出てくるので、親指の横や人差し指の付け根、指の間などにタコやマメができやすくなります。また巻爪もこのような歩き方によって生じることがあります。
更には、変形により神経圧迫や部分的な負荷が集まるところが出てくるので、足の指の間が痛くなるモートン病やかかとが痛くなる足底腱膜炎などが生じやすくなります。またアキレス腱の炎症を繰り返し、アキレス腱断裂のリスクも高まります。
これらに心当たりのある方は、土踏まずのアーチの衰えが起こっている可能性があるので、この後に紹介するケア方法を実践して、土踏まずの機能を回復するように努めましょう。
土踏まずのケア方法
外反母趾
これまで見てきたように、土踏まずを支える筋肉と靭帯が弱ると、着地の衝撃が吸収できずにひざ痛や腰痛をはじめさまざまな不調の原因になります。それなので、日頃から土踏まずのケアを心がけることは、土踏まずの衰えを防ぎ、全身の不調を予防するうえでとても大切なことといえます。
それではどのようなケア方法があるのでしょうか?まずは筋肉から見ていきます。
足指のグーパー体操
土踏まずを支える筋肉で大事なのは、足の指を伸ばしたり曲げたりする筋肉です。ためしに足の指をグーに握ったり、パーに開いたりしてみて下さい。5本の指をきちんとコントロールできるでしょうか?グーの形がいびつだったり、パーにしても指と指の間が離れなかったりしませんか?そのような人は足指の筋肉が衰え、土踏まずのアーチが崩れやすくなっています。毎日10回、全力で足指を握る、開くようにして、足指の筋肉を鍛えましょう。
最初は思うように動かないかもしれませんが、それは足の指の筋力がないだけでなく、足の指を動かす指令が足指に届いていないことにもよります。現代人は裸足で走ったり歩いたりする機会がないため、足の指一本一本を意識して動かすことがありません。それで足指の筋力が弱い人は、足指の感覚も弱くなっている人が多いのです。それなので、グーパー運動をするときは必ず目でどの指のどこを動かすのが苦手かを確認し、そこを動かすことに集中して指令が届くようにイメージしながら足指を動かしましょう。毎日続ければ、早い人では1週間でかなり指の動きが変わってきます。
青竹踏みで土踏まずをマッサージ
土踏まずのアーチを支える力を保つには、土踏まずそのものをケアすることも大切です。実は、土踏まずのアーチが潰れやすい人は、土踏まずが固くなっています。足つぼマットに乗ると痛すぎて立っていられないことはありませんか?そのような方は、土踏まずのアーチが崩れてきている証拠です。痛すぎない程度に土踏まずをケアして、少しずつ土踏まずを柔らかくしていきましょう。
土踏まずのケアには青竹踏みがおすすめです。お風呂上りに1分間青竹の上で足踏みをするようにしましょう。青竹踏みが痛いという人には、イスに座った状態でゴルフボールを踏み、痛気持ちのいい加減に調節しながら転がすことをおススメします。片足1分ずつコロコロと転がしましょう。1週間も続ければ土踏まずが柔らかくなって、痛みが和らいできます。人によっては腰痛やひざ痛が少し楽になってくることもあります。ぜひ毎日続けてみて下さい。
正しい靴選びは土踏まずに優しい
このように土踏まずのはたらきを良くするためには、足指の筋肉や土踏まずのケアに力を入れることが大切です。
一方でアーチを支えるもう一つの組織である靭帯は、残念ながら一度伸びてしまったら元に戻すことはできません。それなので、日頃から靭帯が伸びないように気を付けていくことが大切になります。
それでは、靭帯を良い状態に保つためにはどんなことが必要なのでしょうか?
一つ目は正しい靴の知識を身につけることです。
脱ぎ履きしやすいように、実際の足のサイズより大きい靴を選び、靴ひもを結ばずにユルユルで履いていませんか?このような履き方は、土踏まずを弱めることになります。なぜかというと、サイズが合っていないと、靴の中で足がずれないように筋肉が力むので、土踏まずが固くなるからです。逆にサイズの合った靴を選び、しっかりとヒモを結んで靴と足が面でフィットすれば、足の形が崩れないように補強することにもなります。靴を履くときには必ずヒモを結び直すようにしましょう。
「マメ・タコができやすい。」「足汗がひどく、靴の中が臭くなりやすい。」
などで悩んでいる人は、靴のサイズが合っていない可能性があります。きちんと足のサイズを測ってくれる靴屋さんに相談して、自分の足の特徴を把握するようにしましょう。
アーチサポートのあるインソールを使う
靴の中にインソールを入れることも、土踏まずのアーチを守るには有効です。土踏まずの部分が盛り上がり、アーチを支えてくれるアーチサポートの機能があるインソールを使えば、弱ってしまった靭帯を補強することができます。
ただし、アーチは個人個人で形が違うので、汎用品では土踏まずにかかる体重を支えるのに必要な強度と高さが足りない場合があります。自分の足に合わないインソールを選んでしまったら、痛みや違和感の原因になるからです。それなので、きちんとした足の型を採り、一人一人の土踏まずの形状に合わせたオーダーメイドのインソールですと、土踏まずの形がフィットして十分な強度と高さにすることができます。オーダーメイドのインソール選びは、サンプルを試着して、じっくりと比較検討することをオススメします。
まとめ~土踏まずのアーチを守ることが健康貯金~
いかがでしたでしょうか?
土踏まずのアーチの崩れは、身体の土台のひずみなので全身の歪みにつながり、さまざまな痛みや不調の原因になることがご理解いただけたと思います。誤った選び方で靴を履いて、崩れ始めた土踏まずのアーチを放置することは、いわば健康の負債を蓄積することになります。
逆に言えば、土踏まずのアーチが崩れないように正しい靴の知識を身につけ、毎日少しずつケアをし、インソールを使うことは、腰痛やひざ痛をはじめとする痛みや体のさまざまな不調を防ぐ健康貯金となります。
ぜひ、今回ご紹介したケア方法をできることから実践してみてください!
足の専門家:フットマスター
【ひざ痛・腰痛専門整体】
流カイロプラクティック院
院長 流 岳史
埼玉県越谷市越ヶ谷1-16-12文之堂ビル1-C
048-971-5656
nagare@nagare-chiro.com
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