普段、私が整体の仕事をしていると、クライアント様から「気が付くと姿勢が悪くなっている」という悩みをお聞きします。その時は気が付いて背すじを伸ばしても、少し時間が経つと忘れてまた猫背になってしまう。そんな風に考えている人は意外に多いようです。
姿勢が悪くなると見栄えが悪いだけでなく、肩こりや腰痛の原因になってしまいます。また猫背と鬱との関連性も指摘されていたりと、姿勢と健康はとても密接な関係にあります。
そう考えると、何歳になっても美しい姿勢を保てるように努力することは、心身ともに健康に生きていくことに大切な要素といえます。
それでは日頃どのようなことを意識していくと、正しい姿勢を維持できるようになるのでしょうか?
今回は無意識でも正しい姿勢を維持することについて考えていきたいと思います。
なぜ知らないうちに姿勢が悪くなる?
話を進める前に、ぜひ姿勢で悩んでいる人に知って欲しいことは、姿勢が「悪く」なるのは体の構造上、仕方がないことだということです。
私たちの身体は背骨のお腹側に、肋骨や内臓がぶら下がるようについています。それなので立っていても座っていても、背骨がその重みに引っ張られて猫背になるようにできているのです。
また私たちはヒトとして生活するうえで、仕事をしたり家事をしたりする時に、必ず腕を体の前に持ってきて作業をします。こうした動作も体をお腹側に引っ張るので、背中が曲がった方がラクに感じるようになっていくのです。
こうした観点から考えると、「姿勢が悪くなる」と表現すると良くないことをしているようなストレスを持つ人もいますが、人間誰しもそうなるものだと受け入れて、背中が丸くなっていたら直したり、丸くなりにくい身体作りや習慣を身に着けていく思考に切り替えるようにすると、精神的なストレスの軽減につながります。
正しい姿勢を保つには骨と筋肉をバランスよく使う
もう一つ、正しい姿勢を考えるうえで大事なことがあります。それは筋肉と骨をバランスよく使うということです。
そんなことは当たり前だと思う人もいると思いますが、意外と私たちはこれができていません。
いわゆる「悪い姿勢」というのは、実は全身の関節がロックするポイントでバランスを取っている状態です。関節がこれ以上動かないところで体重を支えれば、骨は動かないし、筋肉も頑張る必要がないので、「ラクだ」と感じてしまいます。
猫背を想像すると分かりやすいと思いますが、胸を開いてキレイな姿勢を保つには背中やお腹の筋肉を使わないといけません。しかし猫背になれば、背骨がそれ以上曲がらないので、筋肉を使う労力がいらなくなるり「ラクだ」と錯覚してしまいます。ところが気付かないところで、背中の筋肉はずっと伸ばされていたり、頭の重さを支えるために首や肩の筋肉が力んでいるので、首肩や背中は凝ってきてしまいます。
このようにいわゆる「悪い姿勢」は、必ずどこかしらの関節がロックして、筋肉がサボれる状態を作っている一方で、別の場所の筋肉に負担がかかるような状態になっています。いろいろと試して可動域の限界点にある関節や負担のかかっている場所を探してみると面白いかもしれません。
これに対して正しい姿勢は、「使うべき筋肉を使って体重を効率良く支えるように骨を並べている状態です。
骨は疲れないので、全体重の大部分を骨で支えることができれば、疲れにくくなります。骨格が正しく並んでいないと、筋肉が頑張らなければいけなくなるので、負担が溜まる部分が凝ってきたり、痛くなってきたりします。
近頃、「インナーマッスル」とか「体幹」と言われている筋肉が、骨格を正しく並べるために必要な筋肉になります。
それなので正しい姿勢を維持するには、こうした筋肉を使って骨格を正しい位置に戻すことを体に覚え込ませることが大切になります。
正しい姿勢を確かめる習慣作り
このように私たちの身体は、姿勢が崩れるような構造をしていて、しかも姿勢が崩れても「ラク」と錯覚してしまうものなので、正しい姿勢を保てるようになるには、姿勢が悪くなっていることを察知する身体づくりが大切になります。
そのためのポイントは、ありきたりですが「1日1回正しい姿勢を確認する」ことです。
「姿勢を正す」と一口で言っても、意外と正しい姿勢がどんな状態か頭で分かっている人は多くありません。何となく胸を開いたり、腰を反らしたり、足を伸ばしたりして、自己流の「正しい姿勢」を意識している人が大半です。
しかし例えば、キレイな字を書きたくて丁寧に書く練習をしても、手本がなければどれだけ書いても字は上手になりません。手本をマネすることで、正しい字の書き方を身体が覚えていきます。
それと同じように、どんなにインナーマッスルを鍛えても正しい姿勢が分かっていないと、骨格は本来の位置に戻ってきません。それなので、正しい姿勢を維持するためにまずやらなければいけないことは、筋肉を鍛えることよりも正しい姿勢を身体に叩き込むことなのです。
毎朝の30秒トレーニング
このように説明してくると、「正しい姿勢って難しそうだな」「体幹の使い方が分からない」と不安になってくる人もいると思います。
でも安心して下さい。誰にでもできる毎朝30秒のトレーニングがあります。
これを行って正しい姿勢の感覚をやしない、日常生活で立っている時も、座っている時も、歩いている時も、気が付いたら正しい姿勢に戻すようにすれば、勝手に正しい姿勢を維持する筋肉がついてくるし、無意識に姿勢が崩れても察知できるようになります。
そのトレーニング法とは下記のような方法です。
①壁にかかと・おしり・肩甲骨・後頭部を付けてつま先を真っすぐ前に向けて立ちます。
②おへそを引っ込めるようにして腰と壁の空間を埋めます。
③その姿勢で30秒キープ。
たったこれだけです。
体幹の筋肉とか難しいことを考えないでも、これでほとんどの人が勝手に体幹の筋肉に力が入ります。最初は慣れないと余計なところに力が入ってしまうかもしれませんが、繰り返していくうちに、柔軟性がなくなっているところが柔らかくなってきたり、筋肉の足りなかった部分がついてきたりして、無意識でも正しい姿勢を維持できるようになります。
猫背のひどい人は後頭部が付かないかもしれませんが、最初は顎を上げるような状態になってもいいので、できるだけ後頭部を壁に近づけるようにしましょう。そうすることで、頭を引き上げる筋肉がついてきます。また、このような人は目線が下にいきがちで、それが猫背の原因であったりするので、違和感があるかもしれませんが日常生活で顎を上げる意識を持つことで、姿勢の改善につながります。
余裕のある人は、お尻を締めるように力を入れてひざのお皿を外側に向けて、内ももをくっつけるようにしましょう。土踏まずが浮いてくるのを感じられると完璧です。
現代人は土踏まずが弱くなって、体重を支えられず潰れてしまいがちです。このせいで足がねじれてO脚やX脚になってしまいます。これを放っておくと、ひざ痛や股関節痛の原因になってしまいます。上記のように、お尻や内ももの筋肉を意識すると土踏まずが引き上げられて、足が真っすぐに使えるようになります。
まとめ~簡単なことからコツコツと
ここまで見てきたように、姿勢が悪くなるのは悪い習慣が身についているからではありません。身体の構造や日常生活での動作の結果、誰しもが「正しい」といわれる状態が崩れてしまうのです。
それなので、美しい姿勢を維持するには正しい身体のポジションを覚えて、崩れてきたら元に戻す習慣をつけていくことが大切です。そのためには壁立ちトレーニングが誰にでもできる簡単な方法です。
毎朝30秒だけ実施して身体の正しい位置を覚えて、1日のうちに気付いたら何度でも修正するようにしましょう。そうすることで、知らないうちに正しい姿勢を維持するのに必要な柔軟性や筋肉がついてきます。特別な筋トレやストレッチはいりません。
毎日コツコツと気付いた時に姿勢を正して、健康のために何歳になってもキレイな背すじを保っていきましょう。
私たちフットマスターは、正しい靴の知識やオーダーメイド矯正インソール製作、新保式ボールウォーキングの指導などを通して、身体の土台の足から心身を整えることをお伝えしています。
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