最近、たまたまテレビを見ていて、20歳前後の女優さんやアイドルの素足が写るシーンに出くわしました。驚いたのは、外反母趾など足の変形の確率です。おおげさではなく、私が見た4人中4人が、土踏まずのアーチの崩れによる何らかの足の変形を確認できました。20歳前後でのこのような足の変形を見ると、将来の腰痛・ひざ痛・股関節痛などが起こるのではないかと心配になってしまいます。
そこで思い出したのが、5~6年前に商店街を挨拶回りしていて当院を訪ねて来たご当地アイドルグループの女の子です。近くでイベントがあるからと、関係者と思われる中年男性とフライヤーを持って現れたのですが、聞くと小学校6年生。見た目に似合わない踵の高いピンヒールを履いていたのですが、見るからに慣れない立ち姿が痛々しい。私は思わず「足、痛くない?」と聞いてしまいました。もしテレビに映った子たちが、こんな年齢の時からピンヒールを履いたとしたら、20歳前後での足の変形も納得です。
昨今、日本の職場で女性がハイヒールおよびパンプスの着用を義務づけられていることに抗議する「#KuToo(クトゥー)」という社会運動を目にする機会が増えてきました。足の専門家のフットマスターとしても、成人女性にも本当は踵の高い靴は履いて欲しくないのが本音のところです。
しかし、カウンセリングをしていると、冠婚葬祭など正装時にはやはりパンプスがふさわしいと思う人が多く、またオシャレでヒールは必需品との考えの方もまだまだ多く、全てをNGにすることは現実的ではないと思っています。そこで私たちフットマスターは、許容できるヒールの高さや、踵の高い靴を履いた時に身体の負担を減らす立ち方・歩き方をお伝えしています。
このように女性がヒールの高い靴を履くことに一定の理解を持って、私はフットマスターの活動をしていますが、それでもやはり子どもには、正常な土踏まずの発達を考えるとヒールを履いて欲しくありません。
そこで今回は、子どもの土踏まずの発達と履き物についてを解説していきたいと思います。
土踏まずのアーチの役割
土踏まずとは、ヒトの足裏にあるアーチ形状のことです。足の裏を地面に着いた時に地面から浮いている部分で、歩く時にこの遊びが生む反発力で、私たちは足の着地の衝撃を吸収して、前へ進む推進力に変えています。
逆に言えば、土踏まずが正常に機能しなければ、足を地面に着いた時の衝撃が各関節に直接伝わるので、腰痛やひざ痛・股関節痛などのリスクが高まります。また、土踏まずのアーチの崩れは、一部は外反母趾や偏平足などの足の形の変形としても確認できます。
このように、私たちが日常生活で普通に歩くうえで、ひざ痛や腰痛などのリスクを考えると、土踏まずは予防の観点でとても大切な役割を担っています。
土踏まずの発育
腰痛などの痛みを防ぐために重要な役割を担っている土踏まずですが、実は赤ちゃんには土踏まずはありません。土踏まずのアーチは子供の成長とともに形成されて、10~15歳にかけて成熟するといわれています。正常な土踏まずが形成されるためには、この年齢までに裸足で走り回って、足の指を一本一本コントロールして、土踏まずを支える筋肉や靭帯を鍛えることがとても大切な要素となります。
しかし、最近の子供はそのような機会が減ってきているため、土踏まずの形成に必要な足指をコントロールする感覚や、体重を支えるために必要な筋力が鍛えられません。その結果、土踏まずが体重を支えられずに潰れてしまって、偏平足や外反母趾などの変形をしやすくなり、足の着地で生じる衝撃を吸収するクッション機能が効かなくなります。そして、この衝撃が体の各関節や筋肉に負担を蓄積させ、腰痛やひざ痛を引き起こしやすくなってしまいます。実際に当院では、こうした土踏まずの機能の弱さを原因にした、サッカーや陸上競技などを行う学生の有痛性外脛骨やシンスプリントなどの相談が、年々増加傾向にあります。
ですから、土踏まずが発達する幼少期には、子供の足の健康を考えて、裸足で走り回る環境を意図的に増やしたり、足の指でじゃんけんをするなど、指を一本一本使う練習を行うことは、とても大切なことなのです。
子供の履き物と土踏まずの関係
このように、子供の土踏まずの発育は、成長してからの体の健康と大きく密接しているのですが、そのことを考えると靴選びも慎重に行わなければなりません。靴は足を守る道具だからです。
子供は足の成長が早く、ついつい大きめのサイズを買ってしまいがちですが、実はサイズの大きすぎる靴は、足の指に余計な力が入って、足の発育には良くありません。
また、デザイン性に優れた靴にも目がいきがちですが、足にジャストフィットさせて、余計な負担を減らす機能性を考えるならば、ひも靴やマジックテープで足の甲のフィット感を調節できる靴の方がおススメです。
このように考えていくと、冒頭に紹介したように、子供にハイヒールを履かせることは、足にとって一番やってはいけないことなのです。実はヒールの高さが高くなるほど、土踏まずを潰す方向への力が強まるため、土踏まずのアーチが崩れやすくなります。大人でもハイヒールを履いていると、足の形が歪みやすいのに、発達途中の子供の体は柔らかいので、すぐに影響を受けてしまいます。
冒頭の話に戻すと、女優やアイドル稼業は、女性らしく見せることが仕事なので、ハイヒールは必需品なのでしょうが、動き回る時や人前に出ない時にはスニーカーに履き替えるなどして、ハイヒールを履く機会が少なくなるように工夫して、健康的な土踏まずの発育の妨げにならないようにして頂きたいところです。
土踏まずのアーチとオーダーメイド矯正インソール
このように土踏まずのアーチを健康に成長させ、維持することは、将来の腰痛・ひざ痛を予防するためにはとても重要ですが、残念ながら現代の子供たちが裸足で走り回って、正常に土踏まずを育む環境や機会は減り続けているのが現実です。また50歳以降になると、加齢により土踏まずのアーチの崩れが加速度的に増してくるというデータもあります。
このような現実に対して、私たちフットマスターは、正しい足や靴の知識をお伝えし、新保式ボールウォーキングの指導やオーダーメイド矯正インソールの製作を通して、土踏まずのアーチの崩れを予防し、足の健康を広げる活動をしています。
足首のゆがみや土踏まずのアーチの崩れなどでお悩みの方は、ぜひ全国のフットマスターにご相談下さい。
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