整体の仕事をしていると、「姿勢が良くなると身長が伸びますか?」とよく聞かれます。私も平均身長より低く、満員電車に乗って圧迫感を感じた時などは自分の身長の低さをコンプレックスに思うので、気になる気持ちは分かります。
答えから先に言ってしまうと、実質の身長は伸びません。ただ姿勢が良くなることで測定での身長の値が1cm程度高くなることはあります。例えば猫背になっている場合は、背骨の関節が少しずつ曲がっている状態です。この曲がっている分がロスとなって、頭のてっぺんの最高到達点が本来の位置より低くなってしまうのです。
それでは、普段の姿勢を良くして背を高く見せるのにはどのようにしたらいいのでしょうか?今回は、姿勢を良くして伸長を高く見せるためのポイントを紹介していきます。
前鋸筋をストレッチして猫背を防ぐ
身長が実際に低く見えてしまう原因の一つが猫背です。背中のカーブがきつくなる分、頭のてっぺんの高さが低くなってしまいます。それだけでなく、猫背になると肩が内側に入りので、自信がなく身体を小さくしているように見えるので、なおさら背の低い印象になってしまいます。
この猫背の原因となるのは、脇腹にある前鋸筋(ぜんきょきん)の緊張です。前鋸筋は肋骨と肩甲骨をつないでいます。この前鋸筋が縮むと、肩甲骨が背骨から離れるように動くので、背中が丸まって腕を前に出す動作がしやすくなります。このように前鋸筋が動くのは、パソコン仕事や家事など腕を体の前に出している作業中です。このような作業を長時間、反復的に続けていると、前鋸筋が凝り固まってしまい、猫背が定着してしまうのです。
前鋸筋が凝ってくると、肩こりや肩の痛み(四十肩・五十肩)のリスクが高くなるので、前鋸筋をマッサージしたりストレッチすることは、これらの予防や改善にもつながります。
前鋸筋ストレッチ
①体を傾ける
②おへそを天井を向けるように腰をねじる
③体の上に来る腕を耳の後ろへ移動させる
体幹の筋肉を使って骨盤の位置を整える
姿勢が悪い人の多くは、骨盤が前や後ろに倒れています。このようなことが起こる原因の一つが体幹の筋肉の弱さです。
また、一般的に「姿勢を正す」というと腰をそらしてしまいがちです。しかし実はこれは誤った認識で、腰をそらすことに意識しすぎると、腰がそりすぎる「反り腰(そりごし」という状態になっていまい、腰のカーブがきつくなって、見た目の身長を低くする原因になります。さらには、この腰のカーブに合わせて背中のカーブも深くなることで、猫背になる一因にもなってしまいます。
このように、骨盤が前や後ろに倒れていたり、反り腰になっている人は、腰痛や股関節痛のリスクがあるので、体幹の筋肉を普段から意識したりトレーニングすることで、痛みの予防や改善をすることができます。
それでは体幹の筋肉を意識するとはどうすればいいのでしょうか?
言葉だけ追うと運動が苦手な人には少しハードルの高いことのように聞こえるかもしれませんが、コツをつかめば非常に簡単です。体幹の筋肉を意識するには「おへそを引っ込める」、ただこれだけのことをすればいいだけです。
おへそを引っ込めてみて、お腹を中心に腰などのウエスト周りに力が入っているのを感じられれば、体幹の筋肉を使えています。骨盤が立ったり、胸が広がったりするのを感じませんか?これは体幹の筋肉を使って骨盤の位置を正したことで、背骨のカーブも整って姿勢が良くなった状態です。この状態をキープできると、手足の余計な力が抜けるので、肩こり予防にもなったり、スポーツ選手の能力向上にもつながります。
少し練習して体幹の筋肉の使い方のコツが分かったら、立っていても歩いていても座っていても、日常生活で気が付いたらおへそを引っ込める意識をすると、徐々に体幹の筋肉が強くなり、姿勢が良くなって、身長のロスも減らすことができます。
骨盤の位置が整うと、ぽっこりお腹が気になる人や、ウエストを引き締めたい人の悩みも解決できます。地道な努力ですが、ぜひ毎日、気が付いた時に「おへそを引っ込める」を意識してみて下さい。
深く呼吸をする練習をする
呼吸と身長と関係があるの?と思う人もいるかもしれません。しかし実はここまでで挙げた前鋸筋や体幹を使えていない人は、胸式呼吸になって呼吸が浅くなる傾向があります。
前鋸筋は肋骨間をつないでいるので、凝り固まってしまうと肺が膨らむ時に肋骨と肋骨の間隔が開かなくなるので、深く空気を吸い込めなくなります。また、体幹をうまく使えていない人は横隔膜の動きも弱くなるので、やはり大きな呼吸をする時の妨げになってしまいます。
このようにして呼吸が浅くなってくると、体内への酸素供給量が少なくなってしまうので疲れやすい体になってしまいます。また肺が膨らみにくくなると胸式呼吸になってしまいます。胸式呼吸では、呼吸をするたびに首の前側の筋肉を使うことになるので、首のこりやそれに関連した頭痛にもなりやすくなります。
それでは大きな呼吸の練習はどうすればいいのでしょうか?
それは仰向けになって呼吸をすることです。仰向けで呼吸すると自然と腹式呼吸になります。腹式呼吸は胸式呼吸よりも空気を吸い込めるので、腹式呼吸の仕方が分からない人は、仰向けで腹式呼吸のコツを掴みましょう。
また、息を吐く時に体幹のところで説明したように、おへそを引っ込めると効果的です。息を吐きながらおへそを引っ込めると、横隔膜を大きく動かすことができ、また体幹のトレーニングも一緒にできます。寝る前に心を落ち着かせて体幹の筋肉を意識しながら、5秒吸って5秒吐くことを5回繰り返す習慣を身につけると、体幹が鍛えられて正しい姿勢をキープできるようになり、身長の目減りを防ぐことができます。
土踏まずのアーチを整える
ここまで姿勢が悪くなることを防ぎ、その原因になりやすい部分のエクササイズやストレッチなどをご紹介してきました。最後にお伝えしたいのが「土踏まずのアーチの崩れ」です。実は、「姿勢が悪くなる」「体が歪む」ことに最も大きく関わっているのが、この土踏まずなのです。
土踏まずは体の土台になります。建物に例えれば基礎の部分になります。建物の基礎工事がずさんに行われると、例え見栄え良い建物が経ってもすぐに建物全体が歪んで崩れてしまうように、土踏まずのアーチが崩れていると、どんなに猫背予防や骨盤の位置を整えても、小手先の対処法にしかなりません。
土踏まずのアーチが崩れると足首が歪みます。実は、この足首の歪みが膝・股関節・骨盤・背骨と伝播することで、姿勢が悪くなり身長が低く見えてしまうだけでなく、腰痛やひざ痛、股関節痛などのさまざまな痛みや不調の原因になってしまいます。
土踏まずのアーチの崩れを防ぐには、足指や土踏まずの筋肉のケアが重要です。
足の指をしっかり開いたり閉じたりできますか?現代人は裸足で生活することが少なくなり、足指の筋力が衰え、足指を動かすことができない人が増えてきています。お風呂で足指の動きを確認しながら、握ったり開いたりをゆっくり10回行う習慣をつけましょう。
土踏まずの筋肉は、アーチの弱い人ほど固まったり冷えたりしています。足つぼマットなどに乗ろうとしても痛くて乗れない人は、土踏まずの歪みが始まっているサインです。床にゴルフボールを置いて足を乗せゴロゴロすると圧を調節できるので、痛気持ち良い強さで土踏まずをマッサージするようにしましょう。
このように足指や土踏まずのケアをすることで、アーチの強度を取り戻すことはできますが、アーチの形を保っている靭帯は年齢とともにゆるんでしまい、元に戻すことはできません。それなので、早いうちから土踏まずのアーチサポート機能に優れたインソールを使って、土踏まずの崩れを予防していくことも重要です。
以上のように、土踏まずの歪みのケアをして、姿勢の崩れを足元から防ぐことも、実際の身長のロスを減らすために大切なポイントとなります。
足首の歪みと全身の歪み
『正しく歩けば不調が消える!1日300歩ウォーキング』新保泰秀(日本文芸社)
姿勢が悪くなるのを気を付けると身長が高く見えるようになる
いかがでしたでしょうか?
冒頭にもお伝えしたように、姿勢が悪くならないように気を付けることは、実際の身長の目減りを防ぐことができます。実はそれだけでなく、姿勢が正しいと私たちは実際よりも存在を大きく感じる傾向があります。
私は職業柄もあり、これまでご説明したようなことを実践しているため、「姿勢がいい」と言われることが多く、また初対面の前に私の写真を見たことがある人に「もっと身長が高いと思っていました」と言われることが多々あります。
実際に、当院に通っているクライアントさんから「健康診断に行ったら身長が伸びていた」という声が多くあります。しかし、姿勢が良くなることで見た目の身長が高くなったということ以上に、血行が改善して悩みだった肩こり、腰痛が改善して、しかも表情も明るくなり、そのうえ骨格の歪みがなくなってボディラインが整ったことで発せられる健康美に、イメージ的な存在感が大きくなるのを実感します。
ぜひ私と同じように、身長がちょっとでも高く見せられたいいなと思う人は、今回ご説明した姿勢を正しくキープするポイントを実践してみて下さい。
ちょっとでも体を大きく見せようと、サイズの大きい靴を履いてはいませんか?サイズの大きい靴を履くことは、土踏まずのアーチが崩れて身長が低く見える原因になります。靴選びやオーダーメイド姿勢矯正インソールのご相談は私たちフットマスターにご相談ください。
足の専門家フットマスター
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