子どもの足は成長が早いからといって、少しサイズの大きい靴を選んでいませんか?私も3人兄弟の末っ子なので、小学生くらいまでは兄のおさがりのブカブカする靴を履いていたので、当たり前だと思っていました。しかし、実はこの「サイズの大きい靴」や「おさがりの靴」は子どもの足の成長を考えるうえでは、絶対にやってはいけないことなのです。今回は意外と知らない子どもの足の健康と靴についてをまとめました。
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土踏まずの形成は8歳くらいまで
子どもの足の成長で特に重要なのは、土踏まずの形成です。
土踏まずは外側アーチ・内側アーチ・横アーチの3つのアーチからなり、バネのような役割をしています。土踏まずにはこのような役割があるので、歩く時の着地の衝撃が緩和して前への推進力が生まれたり、立っている時の姿勢が安定したりします。例えばサルには土踏まずがありません。サルが時折見せる二足歩行に比べて、私たちヒトの二足歩行が安定しているのを考えると、土踏まずの機能がヒトの生活にどれだけ重要かが一目瞭然です。それなので、逆に土踏まずのアーチが正常に働かないと、立ったり歩いたりした時に姿勢が安定せず、疲れやすくなったり、ひざ痛・腰痛などが起こりやすくなります。
このヒトが生きていくうえで非常に大事な機能を持つ土踏まずは、赤ちゃんの時にはまだ発達しておらず、歩き始めてから徐々にできてきて、8歳頃までに形成されます。立つ、歩く、走る、跳ぶなど、いろいろな運動をすることで、土踏まずをバネのように働かせる筋肉が発達して、土踏まずが発達してくるのです。
しかし、最近の子どもは土踏まずの形成が遅くなっており、運動環境や機会の減少、交通機関の発達などの社会や環境の変化が関連していると言われています。
これに加えて、足を守る靴も正常な土踏まずの発達には非常に重要な要素の一つになります。子どもの土踏まずを守り、将来の足の変形や腰痛・ひざ痛を防ぐには、正しい靴の知識が大事になるのはそのためなのです。
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サイズの大きい靴がNGな理由
さて、このように子どもの足の発達は、運動能力や将来の姿勢や健康を考えるうえで、非常に大事なわけですが、実際の足よりサイズの大きい靴を履くということは、子どもの足の成長にどのような影響を与えるのでしょうか?
これには理由が2つあります。
まず、足のサイズに靴があっていないと、足の形と靴の形状にズレが起こります。例えば、靴の曲がるようにできているところと関節の位置がズレてしまいます。こうなると関節が曲がりたくても靴に当たってしまい、痛みが生じたり、それを避けるために足の使い方が捻じれたりします。この足の捻じれが土踏まずに負担をかけ、アーチが崩れる原因になります。また足を捻じって歩いていると、O脚やX脚になりやすくなり、将来にひざ痛や腰痛に悩むリスクが上がります。それなので、サイズに合った靴を履き、まっすぐに足を使うように心がけることが、子どもの足の成長に大切になります。これが1つ目の理由になります。
2つ目は、靴の中で足がズレるので、無駄に力が入ってしまうので、アーチを支える足の指の筋肉の正常な発達が妨げられるためです。例えば、50mを走る時にサンダルを履いていたら、脱げないように足の指を踏ん張り、足首の関節を固めて走りますよね。そのため、間違えなく運動靴を履いて走るより遅くなります。ブカブカの靴を履くということは、靴の形は違えど、サイズのピッタリの靴を履くのに比べて、サンダルを履いているのと同じような状況になります。こうした無駄に力んだ状態では、土踏まずの筋肉も硬直してしまい、衝撃を吸収する反発力を生まなくなってしまいす。それなので、きちんとサイズを合わせて靴を選び、ヒモを結んで、足とのフィット感を上げることが子どもの足の成長には非常に重要になります。
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靴の構造上曲がるようにできている部分
足の関節の曲がる部分
靴の選び方・履き方は子どもの頃に身につく
「1cmくらいなら大きくても大差ないんじゃない?」と思う人もいますが、24cmの大人が1cm大きい靴を履いても、歩きにくさが生じます。それに比べて、14cmの子どもの1cmの誤差は、同じ1cmでも影響が大きくなります。
それでも子どもは、歩きにくさを口にすることは稀です。なぜなら、靴を履き比べた経験が少ないので、どのような感覚が正解か分かっていないからです。サイズの合っていない靴で履きつけてしまうと、子どもの「自分に合う靴」の基準が誤ったものになる可能性があります。実際に、足の専門家・フットマスターとして活動をしていると、意外と苦労するのがクライアントさんの足の感覚に対する誤解を解くことです。腰痛の相談でいらした人がサイズの大きな靴を履いていて、それで歩き方に悪い癖が出るのが痛みの原因だったとして、そのことを説明しても、子どもの頃からブカブカの靴の感覚で慣れてしまっていると、ピッタリサイズの靴が窮屈に感じて、「この靴は合わない」と感じてしまうのです。
それなので、子どもの足に合ったサイズの靴を選ぶということは、大人になってひざ痛や腰痛で悩まないようにするために、足に合った靴の「正しい感覚」が作れる環境を整えてあげることともいえます。
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こまめに靴のつま先のチェックを!
子どもの自分に合った靴の感覚作りという点で気を付けたいのが、やはり子どもの足の成長です。
子どもの足は日々、少しずつ少しずつ大きくなっているので、意外ときつくなってきても本人が気づかない場合があります。知らないうちに靴の中で指が曲がっていたり、重なっていたりすることもあります。これも「自分に合った靴」の感覚を誤らせる原因になりますし、土踏まずのアーチの発達には望ましくなりません。それなので、2~3カ月おきくらいには必ずつま先に適切な余裕があるか確認をしましょう。
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まとめ~子どもの将来のために「正しい足に合った靴の感覚」を覚えさせる
これまで述べてきたように、子どもの足の健康的な成長のためには、足のサイズに合った靴を履くことが重要です。そのことは、「自分に合う靴」に対して正しい感覚を育成することにもつながり、大人になっても腰痛・ひざ痛で悩むリスクを少なくすることになります。
子どもの足の成長の早さに合わせて、小まめにつま先の隙間をチェックし、買い換えていくことは、時間的・金銭的な労力を必要とするところです。しかし、それは子どもの将来の健康への投資になります。
次代を担う子どもの健康を守るために、ぜひできることから始めてみて下さい。
私たちフットマスターは、足を通して、人の健康・人生にたずさわる活動をしております。足・靴・体のことなら、全国のフットマスターにご相談下さい。
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